Formation」カテゴリーアーカイブ

フォトン・エミッション

テナーサックスと電子音響のための (2013)


 

[プログラム]
夏田昌和:東洋の神聖な踊りと世俗的な踊り -サックスと打楽器の為の;エレクトロニクス版-(日本初演、エレクトロニクス版世界初演)
松宮圭太:フォトン・エミッション サックスと電子音響の為の(世界初演)
渡邊裕美 × 安井寛絵:ライブエレクトロニクスを使用した即興演奏
ホワン・アロヨ:シクリ1 -マウスピース無しのテナーサックスとエレクトロニクスの為の-(日本初演)
ピエール・ジョドロフスキ:ミクション テナーサクソフォンと電子音響のための

[出演・トーク]
安井寛絵(サックス)
渡邊裕美(電子音響リアリゼーション)
松宮圭太(作曲)

主催:財団法人東京都歴史文化財団 トーキョーワンダーサイト
後援:東京ドイツ文化センター、ポーランド広報文化センター、日仏現代音楽協会
助成:ソシエテ・ジェネラル

詳細情報:http://www.tokyo-ws.org/archive/2013/10/post-145.shtml

沈黙・刹那・回帰

ピアノのための (2013)

初演 : 2013年9月23日, (公財)青山財団助成公演 安田結衣子ピアノ・リサイタル
@京都・青山音楽記念館バロックザール , 京都市西京区

ピアノのための『沈黙・刹那・回帰』は、永劫回帰に想いを巡らせて制作したリチェルカーレである。はたして「賽は投げられた」のか、「神は賽を振らない」のか。

仏教の世界観で親に先立つ子が行くとされる賽の河原。そこでは、逝った子供がケアンの塔を築けた際に成仏が叶うという。だが、鬼がやってきては塔を破壊し、何度塔を築こうとしてもそれを繰り返すことになるという。ギリシャ神話にも、ゼウスを欺いた罰としてシーシュポスがタルタロス山で岩を押し上げ続けるというエピソードがある。山頂まであと少しというところで岩が転がり落ち、その苦行が永劫に繰り返されるという。

一方、熱力学的視点では、エントロピーの法則によって世界は常に拡散し多様化していくので、類似の状況が再現されることがあってもまったく同じであることはないという。またカオス理論では、単純な規則性で表現されることが結果として予測が非常に難しくなることがあるといい、量子論では、不確定原理によってミクロな領域の粒子の位置と運動量は正確には決められないという。

ソリトン

室内オーケストラと電子音響のための (2013)
(1(picc)-1(ca)-1(bcl)-1(cb) / 1-1-1-0 / 2 percussions-piano-harp-electric keyboad / 2-2-2-2-1)

この作品のインスピレーションとなったのはソリトンという波の自然現象である。水面で発生したソリトンは、その大きさも形も変えることなく動き続け、防波堤やプールサイドの果てにたどり着くまでよどみなく波紋を描き続ける。2つの異なる波が近くにあった場合、普通は互いに干渉しあって波の形を崩してしまうところ、ソリトンの場合はお互いにすり抜けることで振動を弱め合うことがない。光を照り返しつつ、対になった波が水の果てまで寄り添い進んでいく様に惹かれ、作品では2群に分けた室内オーケストラと電子音響によって音楽を形にするというアイディアに至った。扇形に左右に置かれた音の源から様々な音楽のオブジェが湧き出て、音波の軌跡を描き合って音楽を前へと進めていく、そんなイメージで制作を進めた。作曲する上では、騒音と楽音というそれ自体が曖昧な区分けに対して、互いの間を波の振動のように行ったり来たりするものとして捉えた。最も小さな単位の音楽のオブジェから曲の推移のプロセスに至るまで、そうした波紋を意識して制作を行っている。

初演 : 2013年10月18日, 19時開演, パリ国立高等音楽院作曲科修了演奏会
@パリ国立高等音楽院サル・ダール・リリック、19区, パリ

指揮:ジャン=フィリップ・ヴュルツ 
演奏 : パリ音楽院卒業生オーケストラ

*2015年度デステロス作曲コンクールにて佳作(1位無し3位)を受賞

風露 – 風配

フルート、クラリネット、ピアノ、打楽器、弦楽三重奏のための (2015年版) 10分

初演日時: 2015年2月7日20時 「ルガール・ミュルチプル」

場所: スタジオ・ルガール・ド・シーニュ、パリ、フランス

210 Rue de Belleville, 75020 Paris, France.

演奏: アンサンブル・ルガール

人間の知覚する時間は集中力の向け方によって変化し、また一部の自然現象に対しては限定的である。瞬きする間の現象を捉えることや惑星の生涯を捉えることは難しい。例えば葉脈を伝う露があったとして、我々はその移ろいに何を捉えるだろうか。ハイスピードカメラができるようにその動きを追うことは難しいだろう。だから想像してみる。葉の上を走る露がこぼれ落ちるまでの軌跡を。周りの景色が映り込む様子はどんなだろうか、露の大きさによって、葉に落ちた時の衝撃によって、流れる様子は変わるだろうか。露が落ちた後には静寂が訪れるだろう。葉のかすかな揺れを残して。この作品は葉上の露の命を、人間が知覚する時空間で想像して制作した。

「ルガール・ミュルチプル」プログラムノートより


フルート、オーボエ、打楽器、弦楽三重奏のための (2012年版)

(1-1-0-0 / 0-0-0-0 / 1 perc. / 1-1-1-0-0)

初演日時: 2012年9月27日20時

場所: KIWI文化舞台芸術センター、オーストリア・シュヴァッツ KULTUR- UND VERANSTALTUNGSZENTRUM KIWI, Dörferstr. 57, 6067 Absam

演奏: TIMFアンサンブル

委嘱 : クラングシュプーレン音楽祭、陳銀淑、TIMFアンサンブル

「ふとした自然現象を垣間みた時、例えばガラスに亀裂が走る様、投げられたボールが描く軌跡、そうした瞬間に芸術的なダイナミズムへの思考が始まる。」ある作曲家と瞬間への関心。そして経過する時間の力。パリに在住し、活動している松宮圭太 (1980年京都生まれ)は、現在、パリ国立高等音楽院にて作曲と指揮を学んでいる。「私の発想の多くは、共に仕事をする演奏家とのコミュニケーションから生まれる。各楽器の性質をなるだけ多く理解し、各楽器に内包される身振りを観察したいと思っている。また、そうした関心と作業自体が、自然の一瞬に対する自分の関心とも関連していると感じている。」

松宮圭太は、作曲家になろうと決心する前に日本で音楽学の研究をしていた。その後、サウンドインスタレーション、メディアアートの制作を行い、ダンサーや俳優などとプロジェクトを行った後、2008年、主にジェラール・ペソン、フレデリック・デュリユーらの元で作曲、電子音楽を学ぶべく、パリへと経つ。フランス、日本においていくつかの奨学金や賞を得ており、彼の作品はアジア、ヨーロッパの国際音楽祭にて演奏されている。

フルート、オーボエ、打楽器、弦楽三重奏のための本作品「風露 – 風配」において、松宮圭太はこう述べている。

「人間が知覚できる時間の単位は限られている。惑星の生涯に対しても限度があるように、瞬きほどの瞬間に対しても限度がある。例えばハイスピードカメラができるようには、一瞬を正確に捉えることはできない。葉っぱの上を走る露、その軌跡を目で追うことですら困難だ。だから、葉の上に露ができ、葉脈に沿って流れる様を想像してみる。周りの景色が映り込む様子はどんなだろうか、露の大きさによって、葉に落ちた時の衝撃によって、流れる様子は変わるだろうか。露が落ちた後、静寂が訪れるだろう、きっと葉のかすかな揺れが残こるだろう。この作品では、そうした一瞬のドラマに想いを馳せつつ、人間が感じられる時間の構築を試みた。音楽家達がそれを実際のものにしてくれるだろうと願っている。」

*プログラムノートより 原語ドイツ語

ダングルベール讃


クラヴサン・電子音響のための (2011)

初演 : ブルーノ・マルタン、サル・フルーレ、パリ国立高等音楽院、パリ、2011年3月
7分

『この曲に取りかかった時、クラヴサンという楽器に対してどういうアプローチが現代において取り得るだろうかと悩んだ。
まず、この楽器にはダンパーペダルが存在しないということ、従って残響の変化をコントロールする機能がないということを確認した。この物理的制限が、却って古典作品の創意に気づかせてくれることになった。
とりわけ目を引いたのが、バロック期のクラヴサン奏者・作曲家のジャン・アンリ・ダングルベールだった。彼は様々な装飾法を分類して作品の中で用いていた。彼の方法に触発され、装飾や音型を分類化するところから始めた。
次に、私の関心は調律法へと向いた。最終的には、中全音律とキルンベルガー調律(三番)を同時に用いることによって、微分音音程を含む新たな音階を獲得するというアイディアに至った。
電子音響部分は基本的に、楽器の特徴を移し替える作業によって作った。MAXパッチによって楽器音から再合成した音響やリズミックなフィギュアの模倣、そうしたものがベースになっている。
この作品では、楽器と電子音響の双方から生み出される動きが掛け合わさることによって、音楽が構築されている。』

* 初演演奏会プログラムノートより (原文: 仏語)

* この作品はフランス・ミュジークにおいて放送、紹介された。

いろは歌


ソプラノと十三弦箏のための (2011)

初演 : 盛田麻央 (ソプラノ), 日原史絵 (筝) パリ国立高等音楽院、パリ、2011年6月 6分

この作品は2011年の4月頃に書かれ、パリ国立高等音楽院の声楽科修了演奏会において発表された。歌詞には日本に伝わる伝統的な詩である「いろは歌」を用いた。

この詩では日本語に含まれる音節文字が各一回ずつ現われるという特徴を有しているが、歴史を経て生じた発音の仕方の変化により、少なくとも二種類の読み方ができるようになっている。 私はこの過去と現在との異なる発音を共に用いて、それぞれの音色間の行き来による変調、またそれらを繰り返すことによって生まれる律動的効果として用いることにした。また、この音楽的発想を展開する上で、フランス語のR、無声音といったさらに別の発音を用いるに至った。

日本の伝統的な楽器である筝 – 伽耶琴と共通する部分を持つ楽器 – のパートにおいては、伝統的な奏法とその身振りを調べ、それからインスピレーションを得ると共に、楽器奏者と直接話し合い、響体を叩く、弦の弾く位置を変える、といった奏法を考え、作中で用いている。

統営国際音楽祭プログラムノートより

(再演  ソプラノ : キム・ジヒュン、伽耶琴 : セヨン・パク、統営市民文化会館、慶尚南道、韓国、2012年3月)

放射状に割れた硝子


フルートとハープのための (2010) 
初演日時: 2010年9月12日13時-
演奏: 大久保彩子 (フルート)、松村衣里 (ハープ)
場所: 武生国際音楽祭、越前文化センター、武生

*武生作曲賞受賞作品
審査: 細川俊夫、マーク・アンドレ、望月京、伊藤弘之

パラ・ドクサ

弦楽十重奏のための (2009)
(0-0-0-0 / 0-0-0-0 / / 2-2-3-2-1)

初演:2009年3月27日 
作曲アトリエ@サル・フルーレ パリ国立高等音楽院

指揮: 阿部加奈子

演奏: パリ音楽院アンサンブル
ヴァイオリン;Sunmin An, Iréne Duval,Alberto Menchén-Cuenca, Cécile Tête
ヴィオラ;Natacha Dupuy-Scordamaglia,Mayeul Girard, Yuan-Jung Ngo
チェロ;Michaël Bialobroda,Noé Natorp
コントラバス;Tsui-Ju Li

ドクサ・ドグマ


弦楽三重奏のための (2009) 

初演日時: 2009年4月29日
場所: 舞曲のテーマによる三十の新作小品演奏会@サル・ドルグ、パリ国立高等音楽院、パリ
演奏家: フローリアン・ホルベ (ヴァイオリン)、グザヴィエ・ジャヌカン (ヴィオラ)、アルマンス・ケロ (Vlc) (チェロ)

* この作品はフランス・ミュジークにおいて放送、紹介された。

ディアロゴス

バリトンサックスのための (2010) 

初演: 2010年4月23日 音と映像の旅, ポルトガル・リスボン写真センター, ポルトガル
サックス:ヘルダー・アルヴェス

この作品はサックス奏者ヘルダー・アルヴェス氏の委嘱により2010年に制作し、リスボン写真センターで初演された。ギリシャ語のディアロゴス(dialogos)は『間』を意味するディア(dia)と『言葉』を意味するロゴス(logos)の複合語で、英語・フランス語のディアローグ(dialogue)と同じく『対話』を意味する。サクソフォーン独奏による《ディアロゴス》では、性格の異なるいくつかの発声や発話が立ち現れ、それぞれが徐々に変化しつつ対話が織りなされていく様を描いている。何もない空間から身振りと語りで人格を演じ分け物語を紡ぐ噺家のように、複数の発声や発話の間で対話を形成する独奏曲を描こうと思い制作した。

陰で・・・

オーボエとトランペットのための (2005)

初演:2005年9月16日
@日本文化シヤッターBXホール Bunka Shutter BX hall, tokyo.
文化シャッターBXホール、東京

加藤幸恵(オーボエ) 織田祐亮(トランペット)

素描

オーボエ、ヴィオラ、アイリッシュハープのための (2005) 

初演:2005年9月16日
@日本文化シヤッターBXホール Bunka Shutter BX hall, tokyo.

[演奏]
河本慎二郎(オーボエ) 中村洋乃理(ヴィオラ) 寺本圭佑(アイリッシュハープ)
文化シャッターBXホール、東京

スプロケット

フルートとハープ、電子音響のための (2010)

初演: 2010年5月7日 15時開演 電子音響音楽クラス新曲演奏会@シャトネー=マラブリー音楽院ホール

演奏: 神田勇哉、高野麗音
音響: 松宮圭太

rehearsal of "le pignon de chaine" in Chateney, 2010

時の破片


十三人の器楽奏者のための (2011)
(1-1-1-1 / 1-1-1-0 / 1 perc. / 1-1-1-1-1)

初演 : 2011年7月13日アーセナル劇場大ホール、メッス フランス国立ロレーヌ管弦楽団ジャン・ドロワイエ指揮、 8分

「この作品に取りかかったころ、私は、多拍子、複拍子といった律動の組み合わせに関心を寄せていた。アメリカの作曲家、ポール・クレストンが書いた著書『リズムの原理』に影響を受け、特に大編成に適した音の身振りを模索する中で、この音楽的身振りを考察していた。またその一方で、グランという言葉、電子音響音楽の分野において動きの粒子という意味を持つこの発想には長らく関心を寄せてきており、音楽的身振りに対する私の関心を形にすべく、この作品はその発想から出発している。」

初演演奏会プログラムノートより (原文: 仏語) (再演 : パリ音楽院アンサンブル、ロラン・キュニオ、サル・フルーレ、パリ、2011年9月)

献立

クラリネット八重奏のための (2007) 

初演: 板倉泰明、アンサンブル・エクラ
委嘱: アンサンブル・エクラ

2007年7月21日15時〜
アクタス・ノナカ・アンナホール、東京

捻れた果実

クラリネットとピアノのための (2010) 

初演: 2010年2月27日 ワンコインコンサート@兵庫県立芸術文化センター 大ホール

吉田誠 (クラリネット)、松本望 (ピアノ)