いろは歌


ソプラノと十三弦箏のための (2011)

初演 : 盛田麻央 (ソプラノ), 日原史絵 (筝) パリ国立高等音楽院、パリ、2011年6月 6分

この作品は2011年の4月頃に書かれ、パリ国立高等音楽院の声楽科修了演奏会において発表された。歌詞には日本に伝わる伝統的な詩である「いろは歌」を用いた。

この詩では日本語に含まれる音節文字が各一回ずつ現われるという特徴を有しているが、歴史を経て生じた発音の仕方の変化により、少なくとも二種類の読み方ができるようになっている。 私はこの過去と現在との異なる発音を共に用いて、それぞれの音色間の行き来による変調、またそれらを繰り返すことによって生まれる律動的効果として用いることにした。また、この音楽的発想を展開する上で、フランス語のR、無声音といったさらに別の発音を用いるに至った。

日本の伝統的な楽器である筝 – 伽耶琴と共通する部分を持つ楽器 – のパートにおいては、伝統的な奏法とその身振りを調べ、それからインスピレーションを得ると共に、楽器奏者と直接話し合い、響体を叩く、弦の弾く位置を変える、といった奏法を考え、作中で用いている。

統営国際音楽祭プログラムノートより

(再演  ソプラノ : キム・ジヒュン、伽耶琴 : セヨン・パク、統営市民文化会館、慶尚南道、韓国、2012年3月)