風露 – 風配

フルート、クラリネット、ピアノ、打楽器、弦楽三重奏のための (2015年版) 10分

初演日時: 2015年2月7日20時 「ルガール・ミュルチプル」

場所: スタジオ・ルガール・ド・シーニュ、パリ、フランス

210 Rue de Belleville, 75020 Paris, France.

演奏: アンサンブル・ルガール

人間の知覚する時間は集中力の向け方によって変化し、また一部の自然現象に対しては限定的である。瞬きする間の現象を捉えることや惑星の生涯を捉えることは難しい。例えば葉脈を伝う露があったとして、我々はその移ろいに何を捉えるだろうか。ハイスピードカメラができるようにその動きを追うことは難しいだろう。だから想像してみる。葉の上を走る露がこぼれ落ちるまでの軌跡を。周りの景色が映り込む様子はどんなだろうか、露の大きさによって、葉に落ちた時の衝撃によって、流れる様子は変わるだろうか。露が落ちた後には静寂が訪れるだろう。葉のかすかな揺れを残して。この作品は葉上の露の命を、人間が知覚する時空間で想像して制作した。

「ルガール・ミュルチプル」プログラムノートより


フルート、オーボエ、打楽器、弦楽三重奏のための (2012年版)

(1-1-0-0 / 0-0-0-0 / 1 perc. / 1-1-1-0-0)

初演日時: 2012年9月27日20時

場所: KIWI文化舞台芸術センター、オーストリア・シュヴァッツ KULTUR- UND VERANSTALTUNGSZENTRUM KIWI, Dörferstr. 57, 6067 Absam

演奏: TIMFアンサンブル

委嘱 : クラングシュプーレン音楽祭、陳銀淑、TIMFアンサンブル

「ふとした自然現象を垣間みた時、例えばガラスに亀裂が走る様、投げられたボールが描く軌跡、そうした瞬間に芸術的なダイナミズムへの思考が始まる。」ある作曲家と瞬間への関心。そして経過する時間の力。パリに在住し、活動している松宮圭太 (1980年京都生まれ)は、現在、パリ国立高等音楽院にて作曲と指揮を学んでいる。「私の発想の多くは、共に仕事をする演奏家とのコミュニケーションから生まれる。各楽器の性質をなるだけ多く理解し、各楽器に内包される身振りを観察したいと思っている。また、そうした関心と作業自体が、自然の一瞬に対する自分の関心とも関連していると感じている。」

松宮圭太は、作曲家になろうと決心する前に日本で音楽学の研究をしていた。その後、サウンドインスタレーション、メディアアートの制作を行い、ダンサーや俳優などとプロジェクトを行った後、2008年、主にジェラール・ペソン、フレデリック・デュリユーらの元で作曲、電子音楽を学ぶべく、パリへと経つ。フランス、日本においていくつかの奨学金や賞を得ており、彼の作品はアジア、ヨーロッパの国際音楽祭にて演奏されている。

フルート、オーボエ、打楽器、弦楽三重奏のための本作品「風露 – 風配」において、松宮圭太はこう述べている。

「人間が知覚できる時間の単位は限られている。惑星の生涯に対しても限度があるように、瞬きほどの瞬間に対しても限度がある。例えばハイスピードカメラができるようには、一瞬を正確に捉えることはできない。葉っぱの上を走る露、その軌跡を目で追うことですら困難だ。だから、葉の上に露ができ、葉脈に沿って流れる様を想像してみる。周りの景色が映り込む様子はどんなだろうか、露の大きさによって、葉に落ちた時の衝撃によって、流れる様子は変わるだろうか。露が落ちた後、静寂が訪れるだろう、きっと葉のかすかな揺れが残こるだろう。この作品では、そうした一瞬のドラマに想いを馳せつつ、人間が感じられる時間の構築を試みた。音楽家達がそれを実際のものにしてくれるだろうと願っている。」

*プログラムノートより 原語ドイツ語