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混声合唱、2台ピアノと打楽器、電子音響のための合唱組曲《土と炎》2023 1/29

《土と炎》は多治見市の詩人、伊藤芳博先生が書き下ろされた五篇の詩「故郷」「志野」「陶片」「織部」「ここから」を元に作曲した合唱のための組曲です。伊藤先生には詩に込められた言葉の意味や響きなどを教わりながら、詩を解釈し合唱曲として制作する中で様々な相談に乗っていただき、また厚かましいお願いや質問にも快く答えて下さいました。当初は組曲の予定になかった三つ目の詩「陶片」があることを教えて頂いた際には、「陶片」の存在によって他の詩が星座のように呼応し調和するのを感じたため、五曲から成る組曲として制作を進めたいと僕の方からお願いして現在の構成となりました。
委嘱を下さった多治見ロータリークラブの村手洋之会長には、楽曲の制作に当たって得難い体験、沢山の素敵な出会いを頂きました。加藤孝造先生の元でお話を伺い肌で感じた制作へのストイックな姿勢、ひんやりと張りつめた工房の空気と薪ストーブの匂い、仙太郎窯の安藤工先生に無茶を言って収録させて頂いた茶碗を割る音(もちろん元々割れているものを、ですよ)、土を練る音、陶片の軋む音、幸兵衛窯で多くの方のご尽力で録音させて頂いた窯出しの貫入音、窯から唸る炎の音、小田井商店の加藤誠社長に見せて頂いた磁器製作の行程、釉薬を擦る音、磁器を割り散らばる陶片の音(もちろん元々破棄予定のものを、ですよ)、多治見市モザイクタイルミュージアムのタイルの色彩と手触りと歴史、村手会長のご本職である魚関のうなぎ割烹、そして多治見橋のたもとから眺める土岐川と山と町の景色、などなど、まさに五感全体で美濃焼の町の集中講義を受けさせて頂き、そのすべてが心躍る音の記憶となって創作の活力となりました。そしてここには書ききれない多くの方々の支えと激励を頂き、楽曲を仕上げることができました。
五篇の合唱曲と五篇の電子音響と即興による前奏・間奏曲の154ページ28分の組曲に結集した《土と炎》は、ピアノ伴奏による子供のための同声二部合唱、大人のための混声四部合唱への編曲版の制作も含めて、まさに「ここから」歩み出します。
美濃焼の町を愛する多くの方々の想いを受けて制作する組曲《土と炎》が、この土地を愛する人々によって歌い継がれる曲に育ってくれることを祈っています。

初演
TAJIMI CHOIR JAPAN 第49回定期演奏会 「土と炎」
開催日
2023年 1月29日(日) 18:00開演(17:30開場)

会場
バロー文化ホール

混声合唱と2台ピアノ、打楽器のための組曲《土と炎》
作詩/伊藤芳博
作曲/松宮圭太

出演
指揮/柘植洋子
合唱/TAJIMI CHOIR JAPAN 多治見市少年少女合唱団とシニアコア
ピアノ/北住淳、古田友哉
打楽器/水間ゆみ
電子音響/松宮圭太

委嘱
多治見ロータリークラブ

https://www.tajimi-bunka.or.jp/bunka/event20230129.html

ソリトン

室内オーケストラと電子音響のための (2013)
(1(picc)-1(ca)-1(bcl)-1(cb) / 1-1-1-0 / 2 percussions-piano-harp-electric keyboad / 2-2-2-2-1)

この作品のインスピレーションとなったのはソリトンという波の自然現象である。水面で発生したソリトンは、その大きさも形も変えることなく動き続け、防波堤やプールサイドの果てにたどり着くまでよどみなく波紋を描き続ける。2つの異なる波が近くにあった場合、普通は互いに干渉しあって波の形を崩してしまうところ、ソリトンの場合はお互いにすり抜けることで振動を弱め合うことがない。光を照り返しつつ、対になった波が水の果てまで寄り添い進んでいく様に惹かれ、作品では2群に分けた室内オーケストラと電子音響によって音楽を形にするというアイディアに至った。扇形に左右に置かれた音の源から様々な音楽のオブジェが湧き出て、音波の軌跡を描き合って音楽を前へと進めていく、そんなイメージで制作を進めた。作曲する上では、騒音と楽音というそれ自体が曖昧な区分けに対して、互いの間を波の振動のように行ったり来たりするものとして捉えた。最も小さな単位の音楽のオブジェから曲の推移のプロセスに至るまで、そうした波紋を意識して制作を行っている。

初演 : 2013年10月18日, 19時開演, パリ国立高等音楽院作曲科修了演奏会
@パリ国立高等音楽院サル・ダール・リリック、19区, パリ

指揮:ジャン=フィリップ・ヴュルツ 
演奏 : パリ音楽院卒業生オーケストラ

*2015年度デステロス作曲コンクールにて佳作(1位無し3位)を受賞

風露 – 風配

フルート、クラリネット、ピアノ、打楽器、弦楽三重奏のための (2015年版) 10分

初演日時: 2015年2月7日20時 「ルガール・ミュルチプル」

場所: スタジオ・ルガール・ド・シーニュ、パリ、フランス

210 Rue de Belleville, 75020 Paris, France.

演奏: アンサンブル・ルガール

人間の知覚する時間は集中力の向け方によって変化し、また一部の自然現象に対しては限定的である。瞬きする間の現象を捉えることや惑星の生涯を捉えることは難しい。例えば葉脈を伝う露があったとして、我々はその移ろいに何を捉えるだろうか。ハイスピードカメラができるようにその動きを追うことは難しいだろう。だから想像してみる。葉の上を走る露がこぼれ落ちるまでの軌跡を。周りの景色が映り込む様子はどんなだろうか、露の大きさによって、葉に落ちた時の衝撃によって、流れる様子は変わるだろうか。露が落ちた後には静寂が訪れるだろう。葉のかすかな揺れを残して。この作品は葉上の露の命を、人間が知覚する時空間で想像して制作した。

「ルガール・ミュルチプル」プログラムノートより


フルート、オーボエ、打楽器、弦楽三重奏のための (2012年版)

(1-1-0-0 / 0-0-0-0 / 1 perc. / 1-1-1-0-0)

初演日時: 2012年9月27日20時

場所: KIWI文化舞台芸術センター、オーストリア・シュヴァッツ KULTUR- UND VERANSTALTUNGSZENTRUM KIWI, Dörferstr. 57, 6067 Absam

演奏: TIMFアンサンブル

委嘱 : クラングシュプーレン音楽祭、陳銀淑、TIMFアンサンブル

「ふとした自然現象を垣間みた時、例えばガラスに亀裂が走る様、投げられたボールが描く軌跡、そうした瞬間に芸術的なダイナミズムへの思考が始まる。」ある作曲家と瞬間への関心。そして経過する時間の力。パリに在住し、活動している松宮圭太 (1980年京都生まれ)は、現在、パリ国立高等音楽院にて作曲と指揮を学んでいる。「私の発想の多くは、共に仕事をする演奏家とのコミュニケーションから生まれる。各楽器の性質をなるだけ多く理解し、各楽器に内包される身振りを観察したいと思っている。また、そうした関心と作業自体が、自然の一瞬に対する自分の関心とも関連していると感じている。」

松宮圭太は、作曲家になろうと決心する前に日本で音楽学の研究をしていた。その後、サウンドインスタレーション、メディアアートの制作を行い、ダンサーや俳優などとプロジェクトを行った後、2008年、主にジェラール・ペソン、フレデリック・デュリユーらの元で作曲、電子音楽を学ぶべく、パリへと経つ。フランス、日本においていくつかの奨学金や賞を得ており、彼の作品はアジア、ヨーロッパの国際音楽祭にて演奏されている。

フルート、オーボエ、打楽器、弦楽三重奏のための本作品「風露 – 風配」において、松宮圭太はこう述べている。

「人間が知覚できる時間の単位は限られている。惑星の生涯に対しても限度があるように、瞬きほどの瞬間に対しても限度がある。例えばハイスピードカメラができるようには、一瞬を正確に捉えることはできない。葉っぱの上を走る露、その軌跡を目で追うことですら困難だ。だから、葉の上に露ができ、葉脈に沿って流れる様を想像してみる。周りの景色が映り込む様子はどんなだろうか、露の大きさによって、葉に落ちた時の衝撃によって、流れる様子は変わるだろうか。露が落ちた後、静寂が訪れるだろう、きっと葉のかすかな揺れが残こるだろう。この作品では、そうした一瞬のドラマに想いを馳せつつ、人間が感じられる時間の構築を試みた。音楽家達がそれを実際のものにしてくれるだろうと願っている。」

*プログラムノートより 原語ドイツ語

パラ・ドクサ

弦楽十重奏のための (2009)
(0-0-0-0 / 0-0-0-0 / / 2-2-3-2-1)

初演:2009年3月27日 
作曲アトリエ@サル・フルーレ パリ国立高等音楽院

指揮: 阿部加奈子

演奏: パリ音楽院アンサンブル
ヴァイオリン;Sunmin An, Iréne Duval,Alberto Menchén-Cuenca, Cécile Tête
ヴィオラ;Natacha Dupuy-Scordamaglia,Mayeul Girard, Yuan-Jung Ngo
チェロ;Michaël Bialobroda,Noé Natorp
コントラバス;Tsui-Ju Li

時の破片


十三人の器楽奏者のための (2011)
(1-1-1-1 / 1-1-1-0 / 1 perc. / 1-1-1-1-1)

初演 : 2011年7月13日アーセナル劇場大ホール、メッス フランス国立ロレーヌ管弦楽団ジャン・ドロワイエ指揮、 8分

「この作品に取りかかったころ、私は、多拍子、複拍子といった律動の組み合わせに関心を寄せていた。アメリカの作曲家、ポール・クレストンが書いた著書『リズムの原理』に影響を受け、特に大編成に適した音の身振りを模索する中で、この音楽的身振りを考察していた。またその一方で、グランという言葉、電子音響音楽の分野において動きの粒子という意味を持つこの発想には長らく関心を寄せてきており、音楽的身振りに対する私の関心を形にすべく、この作品はその発想から出発している。」

初演演奏会プログラムノートより (原文: 仏語) (再演 : パリ音楽院アンサンブル、ロラン・キュニオ、サル・フルーレ、パリ、2011年9月)

献立

クラリネット八重奏のための (2007) 

初演: 板倉泰明、アンサンブル・エクラ
委嘱: アンサンブル・エクラ

2007年7月21日15時〜
アクタス・ノナカ・アンナホール、東京