Reembodied Sound 2024
トランスデューサー・コンサート
Reembodied Sound 2024 は、トランスデューサーを用いた作品によるコンサートで締めくくられる。ジャンルや演奏形態を横断するこれらの作品は、この技術が持つ音楽的可能性の広がりを紹介する。
プログラム
Assemblage No. 1
Matthew Goodheart
『Assemblage No. 1』は、トランスデューサー駆動の金属打楽器と即興演奏者によるインタラクティブ作品。過去10年間の“Reembodied Sound”関連作品から収集されたコード片、マッピング技法、生成アルゴリズム、演奏者によるサンプルを素材に再構成されており、それらの歴史を新たな即興環境の中で再形成・再文脈化・再提示する。
Coefficient
Stuart Jackson
『Coefficient』は、エレクトロアコースティック・トランスデューサーと特殊マイクを用いた電子作品。両者の間に構築された可変フィードバックシステムは、打楽器奏者が奏でる摩擦音の演奏によって変化・影響を受ける。作品では、摩擦によって生まれる音と打撃による音が明確に区別される。
the interior of objects
Seth Cluett
『the interior of objects』は、ドラムを現場特有の音響空間として捉える作品。ドラムヘッドの裏側にタクタイル・トランスデューサーを、反対側にはピエゾマイクを配置。膜の物理音響から得られたトーンがドラムヘッドを振動させ、制限器によって振幅を制御されたフィードバック周波数がそれに加わる。ドラムヘッド上の節点と腹部が演奏可能な地形となり、演奏者はそれを作曲構造の中で探る。
Doubt is a way of knowing
James O’Callaghan
Sara Constant(フルート)
『Doubt is a way of knowing』は、Jeffrey Stonehouse と Mark McGregor の共同委嘱による、ソリストの楽器を電子的に“複製”し、その音響を拡張するシリーズの一作。本作では、反事実的想像や感情の同時的反応が探究されており、分裂した自己の体験を描く。
Shitatari(したたり)
松宮圭太
この作品は、フィールド録音された水滴音を素材としたミクスト・ミュージックである。トランスデューサーによりピアノの響板を共鳴させ、ピックアップマイクで収音されたピアノと電子音響をリアルタイムに変調することで、録音的、記述的、即興的要素を融合したライブ・エレクトロニクス/室内楽作品となっている。
—— 休憩 ——
reciprocal response
Moon Ha
『reciprocal response』は、10年以上にわたり創作の着想源となっている「(再)循環」の概念をもとにした音楽システム。ニューヨーク大学のラップトップ・オーケストラ new_LOrk の学生たちによって演奏され、触覚的なエネルギー変換を信号と音に変えるしくみを活用している。参加メンバーは Ahmir Phillips、Chloe Yang、Jerry Huang、Devin Park、Jailen Mitchell。
Bionico
Gadi Sassoon
『Bionico』は当初、バルセロナの Sónar でのインスタレーションとして制作され、後にストックホルムの Elektron Musik Studion にてクアドラフォニック作品として発展した。大型トランスデューサーを取り付けた金属板を用い、物理モデルや弦のためのフィードバックループを生成。ライブパフォーマンスでは、4つの共鳴彫刻をトランスデューサーで駆動させ、エレクトリック・ヴァイオリンの演奏を拡張する。各彫刻に施された切れ込みが共鳴モードを変化させる。
The Netted Resonance of Tide Pools
Alyssa Wixson
June Cummings(打楽器)
この作品で用いられる音響オブジェクトは、潮だまりに存在する複雑な生態系を模したような共鳴とフィードバックの網の中に接続されている。打楽器奏者 June Cummings との長時間にわたる音響的探究の中で形作られた作品であり、彼女とともに制作できたこと自体が喜びであった。